ビジネス本・金融本感想文

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投資で一番大切な20の教え ハワード・マークス

この本は、運用資産額が800億ドル以上を誇るオークツリー・キャピタル・マネジメントという投資会社を創業した、ハワード・マークス氏が書いた本です。

この本では、投資を成功させるためには数多くの独立した要素について、同時に、思慮深く注意を向ける必要があるとの著者の考え方に基づいて、20章にわたって投資哲学が述べられています。

このなかで、著者は株式投資を行うにあたって重要なポイントは、企業の本質的価値を推計することだと述べています。そして、本質的価値と現在の株価がどのような関係にあるかを冷静に見極めることが重要と述べています。理由は、Aという企業の本質的価値が株価500円であるにもかかわらず、現実の株価が3000円であったならば、A社の株式を買っても利益を得られる確率は低いからです。

また、最良の投資方法についても述べています。暴落時にはたとえどのように低い株価であろうとも、売らなければならない投資主体が存在すると指摘しています。これは、財団法人や生命保険会社などの機関投資家を指していると思われます。これらの機関投資家は、それぞれの組織内において説明責任があります。

したがって、株価の暴落局面においても株式を保有し続けることについては、その組織の資産運用責任者は組織内で合理的な説明をしにくい立場に立たされてしまいます。このため、大幅に割安な株価となった局面においても投げ売りをせざるを得ないと述べています。そして著者は、このような投資主体が投げ売りせざるを得ない局面こそが、絶好の投資タイミングと述べています。過去に成功してきた投資家は、このような局面において投資を果敢に実行してきたと述べています。

一方、著者はサイクルに注意を払うことが重要とも述べています。この世のほとんどのものにはサイクルが存在し、投資の世界も同様と述べています。

一本調子に株価が数年間も上昇し続けることはなく、上昇トレンドが発生するということは、下落トレンドも必ず発生するのだと述べており、このトレンドを見極めることが投資で成功するポイントであるとも述べています。

サイクルを重視せよ

私は証券会社の子会社で、ファンドマネージャーを務めていますが、この本を読んで、投資については普遍的な法則などは存在しないのだと思い知らされました。そして、それまでは、ある投資手法によって一定期間は高い運用収益を得ることができたとしても、投資家心理は移ろいやすいため、一転して相場は逆の方向へ大きく動き出してしまうことを学びました。それが、著者が述べている「サイクルを重視せよ」ということなのだと理解することができました。

この本を読んで、投資を実行するタイミングが明快に述べられている点は非常に勉強になりましたし、仕事上、実践することができました。具体的には、「経済が好況期に突入する」「金融機関が民間企業向けに融資金額を拡大させる」「金融機関が事業拡大に向けて動き出し、与信の基準緩和に動く」などの事象が現れれば、株式を買うべきなのだと学ぶことができました。

そして、サイクルが下落トレンドへ向かう局面における事象についても学ぶことができ、仕事上、実践することができました。具体的には、「貸倒損失を出した金融機関が融資意欲を減退させ、融資姿勢を消極化させる」「金融機関の与信規準が厳格化される」「民間企業が資本不足に直面し、しかも借金の借り換えも困難となる」などの事象が現れれば、株式を売却して現金化を進めるべきなのだと学ぶことができました。また、過去数年間の株価下落局面や景気後退局面では、いちはやく実践することができたため、損失を必要最小限に抑えることに成功しました。

この本を読んで、もっとも勉強になったことは、この世の全てにはサイクルが存在するという点です。ですから、現在のように株価が上昇局面に入って、すでに4年が経過している局面においては新規に株式を購入することには、慎重であるべきだと考え実践しています。また、本質的価値の数倍規模にまで株価が上昇した株式については利益確定を進めています。

いまは、この本に書いてあることを踏まえて、できるだけ現金を増やし、来たるべき暴落局面を待ち構えている状態です。

証券会社や銀行に勤務している方にお勧め

この本は、私のようなファンドマネージャーの他に、証券会社や銀行に勤務している方に、まずお勧めしたいと思います。お客様に投資を勧めている職業に就かれている方には、ぜひこの本を読まれることをお勧めしたいです。

しかし、金融関係の方だけでなく、私は政治家や財務省の官僚、企業経営者の方にもこの本を読んでいただきたいと思います。なぜなら、この世のすべてにはサイクルが存在するのだということを知っていただきたいからです。

例えば景気が良くなって数年が経過したからといって、消費税を増税するのは安易な考え方だと思うのです。増税を決断したタイミングが景気サイクルの頂点だったとしたら、増税が実施されるタイミングでは景気サイクルは下落トレンドに突入しているわけですから、増税の判断は失敗ということになってしまいます。

民間企業の設備投資や企業買収も同じです。景気サイクルの頂点のタイミングで、設備投資や企業買収を実行してしまえば、それから景気は下落トレンドに入ってしまうのですから、当然ながら新規投資した設備や、買収した企業については減損処理をして、特別損失を計上しなければならなくなります。

幅広い方々にこの本を読んでいただき、決断するタイミングを間違えないことが重要なのだということを認識していただきたいと思うのです。

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