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ビジネス本・金融本感想文

おすすめビジネス本・金融本をご紹介

12大事件でよむ 現代金融入門 倉都康行

会社経営

「12大事件でよむ現代金融入門」は、現代の金融史に残るような12の事件について解説した本です。ニクソンショックやプラザ合意といった歴史に残るような重要な事件からはじまって、ブラックマンデーやバブル崩壊など金融システムの脆弱さを露呈した事件が続きます。

そして、21世紀になってから発生したリーマンショック・ギリシャの財政危機問題というまだ人々の記憶に新しい事件まで、全部で12の「事件」を取り上げています。

時系列順に12章立てになっており、1事件ごとに1章を割いて、当時の金融背景や各国の対応、そして日本はその時にどのような影響があり、どう対応したのか、などが詳しく説明されています。

1つの事件について、事件が発生する""前兆""から、その事件が引き起こした影響まで、時系列にそって克明に記述されています。

また、外為を専門としていた著者ならではの深い分析も、理解を助けてくれます。例えばプラザ合意の章では、「ドル高是正への合意がなされた」という事実だけではなく、その背景にあるスミソニアン協定などについても関連付けて説明がされています。また、プラザ合意後に発生した為替の動向も、その後に発生することになるバブル経済につながるものとして解説されています。

著者は、現在の三菱東京UFJ銀行の前身3行のうちの一つである、旧東京銀行で勤務していた「元銀行マン」です。旧東京銀行は、外国為替を専門に取り扱っていたこともあって、実際にマーケットの場に身をおいていた著者ならではの視点から、金融の背景について学ぶことができます。いくつかの事件については、著者が実際に銀行に勤務していた時に発生したため、当時の日本の銀行の対応についても知ることができるのも興味深い点です。

12章にわたって1事件ずつ金融事件についての分析がされているのですが、それぞれの事件の「つながり」を重視しているのも、この本の特徴と言えます。12の事件が独立して解説されているのではなく、どのように関連しあっているのかがわかりやすくなっています。

金融政策が長期的にどのようなことを引き起こしたのかが理解できる

日常生活の中でも、金融に関するニュースを見聞きすることは頻繁にあります。

景気や政策などにも、金融が深く結びついています。しかしながら、政府が実施する金融政策などのニュースに触れても、目先の変化のみに気を取られてしまいがちで、長期的にどのような結果になるのか、などといったことについては、あまり意識をしていませんでした。

本書では、それぞれの金融政策が長期的にどのようなことを引き起こしたのか、という部分についてもしっかりと書かれています。同じニュースを見ていても、この本により知ることができた背景知識を持っていると、深く理解することができるようになるという点で、役立ちました。

また、本書は、世界中で過去に発生した大きな金融事件について取り扱っています。金融は、一つの国の問題が、世界中に広まって影響を及ぼしてしまう分野です。また、株価や為替といった数値の動きだけにとどまらず、人々の生活にも間接的に変化を与えることもよくあります。

そのような事例を、歴史を通して知ることができるのも、役に立つ点です。金融政策は、今でも様々なものが実行されていますが、その多くは過去にも類似した政策があるのです。例えば、景気を意図的に変化させるために使われるのが、政策金利の調整です。現在でも、景気を上向かせるために、日本銀行は金利の引き下げを行っています。この金利の調整によって景気をコントロールする金融政策は、古くから行われていたものです。

過去にはどのようなシチュエーションで、どのようなことを目的として金利を変化させたのか、ということを、本書を通して知ることができます。過去の政策でも、目的通りに行かないものも多数あります。そして、一見、目的を達成することができてうまくいったと思われる政策も、実際には副作用として他国などに悪影響を与えていることもあります。

このような過去の実例を参考にすることで、現代の金融政策についても広い視野で俯瞰することができるようになりました。

現代の金融について、より深く学びたい人におすすめ

現代の金融は、情報化が進んでいること、またグローバル化の進展によって複雑になっていることが特徴としてあげられます。過去の金融史を学んだところで、その知識は現代には応用することができない、と思われる方も多いかもしれません。

ですが、現在も使われている金融の根本的なしくみの部分は、過去の金融事件などをきっかけにして誕生したものです。その誕生の流れを知ることによって、「なぜ」そのような仕組みになっているのかを深く理解することができます。

例えば、現在では当たり前になっている変動相場制。毎日テレビなどでドル円相場について報道されます。しかし、この変動相場制が開始されたのは1971年のスミソニアン協定ですから、意外と最近の出来事です。本書では、固定相場制が終了したのはなぜか、どのような不都合が生じていたのかについても、詳しく解説されています。

このように、金融の流れを追うことによって、現代金融に対する知識を、一層深めることができます。

12大事件でよむ現代金融入門

12大事件でよむ現代金融入門