ビジネス本・金融本感想文

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小倉昌男 経営学 小倉昌男

 

今回ご紹介する本は「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親、戦後40年間でヤマト運輸を日本屈指のエクセレント・カンパニーに押しあげた希代の経営者、小倉昌男氏による経営の挑戦の数々を描いた自伝的著書です。

市場を見通す洞察力と論理的な経営手法、規制行政に単身で闘いを挑む行動力、そして引退後みずからの持ち株を寄付して福祉財団を設立し、障害者の社会復帰に無報酬で取り組む引き際のよさや、政財界からジャーナリズムにいたるまで数多くの支持者がいる著者が自ら筆を執り、書き下ろした著作です。

創業者の先代から受け継いだヤマト運輸の歴史とクロネコヤマト開始とその発展について、どのように考えながら経営してきたかが詳しく描かれています。

創業当初のヤマト運輸の危機的状況をを乗り切ることができたのは、大正十二(一九二三)年に現在の三越百貨店の前身である三越呉服店との間に市内配送契約が締結されたからでした。

しかし、当初の三越社長から変わった経営体制に対する運送業者に対する冷徹な値下げ要請や当初は契約事項になかった経費請求など度重なる新三越経営体制に小倉氏は、当時の最大の顧客であった三越からの撤退という重大な決断を、苦渋の決断を持ってして断行しました。

その裏には当時では、赤字事業にしかなりえないと物流業界では思われていた宅配便事業に打って出る決意と覚悟がありました。

また過去での小倉氏の行政とのやりとりの中にも当時の経営者とは一線を画する小倉氏の姿勢が垣間見えます。当時のヤマト運輸は、監督官庁によく申し立てを行っていた。しかし、それはひたむきに顧客に対して良質なサービスを届けたいという小倉氏の姿勢が貫き通されただけのことでした。。小倉氏の見解からすればヤマト運輸が市場に対して真摯に向き合うのを行政が不親切だっただけのことという認識でした。

そして当時は日本郵政のみが行っていた個別郵送事業は当時の業界の認識からすれば赤字事業としかみなされてなかったものが何年もの間、ヤマト運輸の現場のセールスドライバーからの実直なフィードバックもありながら試行錯誤を続け、黒字事業にまで成長させ、「宅配便」という言葉も作り出しました。

リーディングカンパニーの経営者から学べること

この本、小倉昌男氏による「小倉昌男 経営学」から学べることは大きく大別すると三つあります。

まず、第一には今でこそ、日本の物流業界を支えるリーディングカンパニーである「ヤマト運輸」ですが設立当初から、今に至るまで、運輸業界ならではの苦難を経験してきています。輸送に対する小口数の割合や長距離輸送の効率性や業界認識などです。
それらの日本市場における輸送需要の変遷が小倉氏の熱い言葉と共に感じ取れます。

次に、二つ目は、これは多くのリーディングカンパニーの経営者に共通する点かもしれませんが、既成観念に捉われないという点です。おそらく、日本の経営者の大半は会社経営が利害関係者の総意を尊重した上での判断が求められるので保守的な姿勢になりがちです。このことを悪いとも良いとも判断できる基準はありません。

しかし、小倉氏は常に市場を現場目線、顧客目線で見た上で市場の需要を見出し、当時の既成観念を打ち破ってきました。「攻めの経営神髄は、需要をつくり出すところにある。需要はあるものではなく、つくるものである。」とあるように小倉氏は当時の会社経営者とは一線を画する、自分だけの判断軸を持っていたことがうかがえます。

また小倉氏の有名な格言で「サービスが先、利益は後」という言葉からもいかに企業経営において顧客目線でサービスを提供することが重要かを学ぶことができます。

そして、三つ目は、経営方針に現場の声を反映させることの重要性です。私も企業という組織に属しておりますが、文中の描写にあるような現場セールスドライバーと小倉氏の交流はなかなか実践できるものではないと思います。

「宅急便を始めて気がついたのは、これまでは、荷主の輸送担当者にあごで使われていたという感じだったのが、集荷に行っても配達に行っても、家庭の主婦から必ず「ありがとう」「ご苦労様」という言葉をかけられることであった。

これまで聞いたことのない感謝の言葉を聞いて、現場を回るドライバーたちは感激してしまった。」とあるように宅急便を始めることによって現場でこのような達成感がありこの意識の共有があったからこそ現場と経営の一体感、小倉氏の格言である、「全員経営」が生まれたのだと思います。

このように、「ヤマト運輸」のような大きな会社でここまで現場と経営側の一体感がある会社は稀有な例だと思います。しかし、この側面こそ、「ヤマト運輸」を業界きってのリーディングカンパニーたらしめた面であり、多くの会社が倣うべき姿勢であるように思います。

「ヤマト運輸」の成長を体験できる

今回、ご紹介させて頂いた小倉昌男氏の「小倉昌男 経営学」は基本的にビジネスパーソンの方であれば、是非とも読んでいただきたい内容だと思います。また近年、発展著しい宅配業界の草分け的存在の「ヤマト運輸」がどのようにして成長してきたかの企業沿革が小倉氏の当時の思いとともに臨場感を持って読むことができるので普通に読み物としても面白いです。

また、もし物流業や倉庫業に属する企業に勤められているビジネスパーソンの方であればより一層、臨場感を持って本書を読んでいただけるように、思います。

何れにしても本作からは、どのような業界に属していても企業経営の本質を学ぶことができると感じられますし、経営と現場の関係性の重要性や顧客サービスの提供のあり方についても学ぶことが多い本だと思いますので積極的に手にとって読んでいただきたいと思います。

またこれから社会に出る準備をしている、大学の就活生の方も企業経営のあり方や近年その存在感が私たちの生活の物流インフラを支えていると言っても過言ではない「ヤマト運輸」経営についての本作を読んでみるのもいいと思います。

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学